赤ちゃんを飛行機に乗せても大丈夫?どんなリスク・悪影響がある?

赤ちゃんを連れて飛行機に乗らないいけなくなったけど、赤ちゃんって飛行機に乗せても大丈夫?
ウイルスとか放射線とかが心配、中耳炎になるって聞いたこともあるけど・・・?
など、このページでは生後1ヶ月以内の新生児や低月齢・低年齢の乳幼児を飛行機に乗せることで考えられる「リスク」「悪影響」「健康上の問題」について考えてみます。

規制や決まりはあるの?

赤ちゃんをいつから飛行機に乗せてもいいか?というと、国内線か国際線か?や航空会社によっても違いますが、だいたい生後7日~14日程度であれば乗せることは可能です。

航空会社別の搭乗可能可否については以下の記事をどうぞ。
赤ちゃんはいつから飛行機に乗せられるの?国内線・国際線・航空会社ごとまとめ

特に新生児や乳幼児の飛行機搭乗について法律等で規制はされておらず各航空会社の決まりや判断によるというのが現状です。

一応、WHOの「International travel and health」において航空機旅行が適さない人という形で、生後2日内の新生児とされています。

航空機旅行が適さない人

  1. 生後48時間以内の新生児(7日以内は控えるべき)
  2. 妊婦:妊娠36週以降 (多胎妊娠の場合は32週以降)
  3. 狭心症、あるいは安静時の胸痛がある人 (不安定狭心症)
  4. 重症あるいは急性の感染症に罹患している人
  5. ダイビング後の減圧症を発症した人
  6. 頭蓋内圧亢進症がある人(脳出血、外傷、感染症など)
  7. 副鼻腔、耳、鼻の感染症がある場合(特に耳管閉塞を来しているとき)
  8. 6週間以内の心筋梗塞: できれば6か月は搭乗しないほうが安全
  9. 空気・ガスが残存している可能性がある手術後
  10. 重症呼吸器疾患、安静時呼吸困難、治療未完了の気胸
  11. コントロールが不十分なメンタル疾患

WHO「International travel and health」

あまりにも生後すぐの場合は、よっぽどの理由がない限り航空会社が搭乗を認めていません。
ほとんどの航空会社では生後48時間以内での搭乗は不可となっています。

また生後1週間以内での搭乗の場合、診断書や許可書など主治医の書面による許可(メディカルクリアランス)の提示を必要とする航空会社もあります。
つまり飛行機に乗っても大丈夫なくらい健康ですよ、飛行中に何か治療が必要となるような事態になることはないでしょう。というお墨付きが必要というわけです。

それ以降、だいたい生後7日~14日以上経過している健康な赤ちゃんであれば、航空会社から搭乗拒否をされることは基本的にありません。
(※未熟児や保育器に入っているなどの特別なケアを必要するケースは除く。)

ウイルス感染症への感染リスクは?

飛行機の機内というのは湿度0~20%と非常に低くなっており乾燥しています。
乾燥する冬にインフルエンザなどのウイルス性感染症が流行することから分かるように、『乾燥』しているとウイルスに感染しやすくなります。

なぜ『乾燥』しているとウイルスに感染しやすくなるというと理由は2つあり、

ひとつは、ウイルスは唾液や痰(タン)による飛沫感染が主で、空気の気温が低く乾燥していると活動的になるという特徴があります。
ウイルスは空気中の湿気で床に落ちる特徴がありますが、空気が乾燥しているとそれがなくなり、より長く遠くまで飛散するようになります。

もうひとつは、乾燥によりのどの粘膜の粘液という水分が減少してしまいます。
粘液には病原体を排除する働きがあるので、乾燥により粘液が減ることでウイルスが体内に入りやすくなってしまいます。

つまり飛行機の機内はウイルスにしてみると絶好の活動場所なわけです。
非常にたくさんの人が長時間、閉鎖された空間で過ごしますので、ウイルスに感染する確率も高くなります。
※ただし、飛行機は常に新鮮な空気を機外から取り入れていて、だいたい3分間で全ての空気が入れ替わるようになっています。
さらに空気は前後には流れず上から下に流れるようになっています。
ですので、よっぽど近くにウイルス保菌者がいて、直接、飛沫が飛んでくるような状況でもない限り、それほど感染症のリスクは高くはありません。

一番多いウイルス感染症は、上気道感染症いわゆる風邪です。
ほかにもインフルエンザやRSウイルスなども多いです。

赤ちゃん、特に生後1ヶ月以内の新生児期は体力もまだまだ少なく免疫力も弱いため、これらの感染症にもかかりやすく、感染すると重症化する率も高いです。

機内では、赤ちゃん用のマスクをつけたり、赤ちゃんのそばにぬれタオルを掛けておく、マメに水分補給をしてのどの乾燥を防ぐなどの対策が重要になります。

耳に悪いってホント?

なぜ飛行機の離着陸時に耳が痛くなるの?

飛行機の離着陸時に耳が痛くなった経験をお持ちの方も多いと思います。

これは『気圧』が関係していて、地上(高度0m)の気圧を1気圧とすると、高度が高くなるほど空気は薄くなっていき気圧は低くなっていきます。
たとえば飛行機の巡航高度である3万3000フィート(約1万メートル)は約0.2気圧となります。

このような気圧の変化に人間の体は耐えられないため、飛行機ではエンジンからの高温高圧の空気をエアコンに送りこみ機内の気圧を調整しています。
ただし、機内の気圧は地上と同じ1気圧ではなく、約0.8気圧となっています。
これはだいたい標高約2,000メートル(富士山の5合目くらい)の気圧と同じくらいです。

ちなみになぜ地上と同じ1気圧にしないかというと、その場合、機体が受ける圧力が大きくなりすぎ、機体の外版の厚みをもっと分厚くして強度を増す必要が出てくるからです。
そうなると、飛行機の重量が増えてしまい乗員乗客の数や荷物などを十分に積めなくなるからです。

人間の体は地上にいるとき体の外側から1気圧の力で押されています。
逆に人間の体の中からも同じ1気圧の力で押し返すことでバランスを取っています。

飛行機は地上にいるときには機内も1気圧の状態ですが、離陸して高度を上げていくにしたがって機内の気圧は下がっていきます。

そうなると体の外側の気圧と内側の気圧に差が生じ、内から外に向かって圧がかかります。(体の中のガスが膨張する)

ポテトチップスの袋を富士山に持って行くと登るにしたがって、袋がパンパンに膨らんできますね。
これは高度が増し気圧が下がってくることによって、袋の中の空気(ガス)が膨張してくるからです。
これと同じようなことが人間の体でも起きているというわけです。

耳の中には鼓膜の奥に中耳という空洞部分(鼓室)があり、高度が上がってきて差圧が生じてくると中耳の中の空気が膨張してきて鼓膜を外側に押します。
このときに痛みを感じます。

着陸のときはその逆で、機内の0.8気圧に体の内側の気圧も慣れたところに、高度を下げていくにしたがって機内の気圧が上がっていき、今度は外側から内側へ圧力がかかります。
今度は中耳の中の空気が収縮するので鼓膜が内側にベコッとへこんだ状態になり痛みを感じます。

これは航空性中耳炎と呼ばれます。
航空性中耳炎は通常、着陸して気圧差がなくなったりすれば放置していても治りますが、飛行機を降りても数日間、耳の痛みや耳閉感(耳の詰まった感じ)が治らない場合は耳鼻科を受診した方がいいです。

耳の痛みを和らげる、予防するには?

中耳は耳管という細い管で鼻の奥(上咽頭)とつながっています。
耳管は普段は閉じていますが、つばを飲み込んだりあくびをしたりすると一瞬開きます。
そうすることで鼻を通じて空気を出し入れし、外界との気圧の差をなくしているわけです。

つまり飛行機での耳の痛みを治すには、水を飲んだり、飴をなめたり、ガムをかんだり、つばを飲み込んだり、あくびをしたりして、耳管を開くようにすればOKです。
いわゆる耳抜きというやつです。

耳抜きの方法には、バルサルバ法、トインビー法、フレンツェル法など色々な方法があります。

バルサルバ法

鼻をかみます。
軽く息を吸います。
口を閉じ、鼻をつまんだ状態で、徐々に鼻から空気を出すようにします。

こうすることで、鼻から出きれない空気が耳管を通り中耳に送り込まれます。

バルサルバ法は、中耳が減圧になり鼓膜がへこんでいる状態、つまり着陸時に有効です。
離陸時は逆効果になる場合があるので注意しましょう。

一気にやると逆に耳を痛めるのでゆっくりと様子を見ながら空気を送り込むようにします。
特に子供にやらせると思いっきりやりがちなので、あまりオススメの方法ではありません。

トインビー法

鼻をつまんだまま、つばを飲み込みます。

フレンツェル法

鼻をつまみます。
鼻をつまんだまま、舌の奥(根元)の方を上あごに持ち上げます。

自分で耳抜きできない赤ちゃんの場合

3~4歳くらいの幼児になれば自分で耳抜きができる子もいるかもしれませんが、赤ちゃんの場合、自分では耳抜きができません。

赤ちゃんは耳管が短く太いので、ちょっと顎や口を動かすだけで耳管を通して鼻と空気が通るので、耳抜きは不要という意見も多いです。

確かにそうなのですが、離着陸時に泣く赤ちゃんも多いことから、大人ほどではないにしてもなんらかの痛みや違和感、不快感を感じる赤ちゃんも多いのだと思います。
ちなみに泣くことでも耳抜きとなります。

ですので、離着陸時には赤ちゃんにミルクや母乳、水や白湯などなにかを飲ませてあげるようにしましょう。
もしくはおしゃぶりをくわえさせる方法でもOKです。
そうすることで赤ちゃんが顎を動かし耳抜きとなります。

離着陸時に母乳で授乳するのはちょっと安全面から難しいと思われるので、あらかじめほ乳瓶に粉ミルクか搾乳か白湯をすぐに飲める状態にしておき、離陸して少し経ってから、着陸態勢に入って高度が下がり始めてから、などのタイミングで与えます。

以上のように離着陸時に何か飲ませてあげるようにすれば赤ちゃんの耳への負担、悪影響はそれほど気にしなくても大丈夫です。

ただし、赤ちゃん・子供が風邪などをひいていて鼻が詰まっている、アデノイドなどの扁桃肥大やアレルギー性鼻炎、中耳炎になっているなどの場合は、飛行機に乗せるのは延期して、まずはきちんと完治してからにした方が賢明です。

脳や心臓に負担がかかる?

高度1万メートルでの機内の気圧は約0.8気圧ですが、それに伴い機内酸素分圧(空気中の酸素濃度)も地上に比べると下がります。
具体的には地上の約80%となります。

これはだいたい高度2,000メートルの山に登っているような状態です。(富士山の5合目くらい)
さらにゆっくり登るのではなく、十数分でその高度に到達します。

これにより血中酸素濃度は通常98~100%程度のところが90%前半まで低下します。
特に心肺機能に問題のない健康な大人であれば激しい運動などをしない限り、問題のないレベルですが、心肺機能が未発達な赤ちゃんにとっては大きな負担となる場合があります。

さすがに酸素が薄くて脳に何か障害が残るというようなことまでは考えづらいですが、赤ちゃんの心臓や肺に負担はかかります。

航空会社のホームページでも新生児には酸素不足が悪影響を及ぼす可能性があると書かれています。

気圧の低下に伴い機内酸素分圧(空気中の酸素の圧力)も地上の約80%となります。呼吸器の障がい、心臓の障がい、脳血管の障がいや重症貧血などは酸素濃度の低下により影響を受けます。また、妊娠後期の妊婦や新生児にも酸素不足が悪影響をおよぼすことがあります。
JAL - 航空機内の環境について(JALプライオリティ・ゲストサポート)

冠婚葬祭、帰省、海外赴任、旅行など赤ちゃんを連れて飛行機に乗らねばならない都合は色々あるでしょうが、最短でも生後1ヶ月経過して1ヶ月健診を受けてから、さらに可能であれば生後4~5ヶ月頃の首が座った後にしてあげた方が安心です。

飛行機で放射線被ばくする?

地球には宇宙から放射線が降り注いでいます。
いわゆる宇宙線というやつです。

地上では地磁気と大気によって宇宙線から守られており、地上に届く宇宙線はごくわずかとなっています。

しかしながら、飛行機に乗って高度1万メートルを飛ぶと大気が薄くなる分、地上にいるときよりも多くの宇宙線を浴びることになります。
宇宙線の線量は緯度や時期によっても大きく変わるので一概には言えませんが、たとえば日本とヨーロッパをジェット機で往復すると、日本の平野部で受ける線量の100倍ほどの被ばくをします。

航空路線ごとの宇宙線量をカンタンに計算してくれるツールがあるので、できる限り正確な線量を知りたい方は見てみるといいでしょう。
時期と出発空港、到着空港を選ぶだけで往復した場合の宇宙線量を出してくれます。

航路線量計算システム

航空機での宇宙線被ばく線量を計算表示するシステム

地上の100倍と聞くとなにやら怖くなりますが、私たちは地上で普通に生活しているだけでも食べ物や土壌などから絶えず被ばくしており、だいたい年間2mSv(ミリシーベルト)ほどの放射線を自然界から受けています。

年1回ヨーロッパに海外旅行に行ったとしても、0.1mSvの線量が増えるだけなので、それほど気にするレベルではありません。
ちなみに胸部X線検査(レントゲン)を受けた場合の線量は約0.05mSvです。

気にしないといけない人は非常にたくさんの回数・時間、飛行機に乗る人、つまりパイロットやCAなどの乗務員の方々です。

乗務員の被ばく問題についてはこの記事のテーマではないため詳しくは省きますが、現状、日本では法的な規制はされていないですが、文部科学省の放射線審議会が、2006年4月に「航空機乗務員の宇宙線被ばく管理に関するガイドライン」を出しています。

赤ちゃんは放射線感受性が高い

放射線の被ばくを受けた場合、同じ人間でも体の部位によっても影響を受ける度合い(放射線感受性)は異なり、リンパ組織、造血組織(骨髄)精巣、卵巣、皮膚など細胞分裂が盛んな部位ほど放射線により損傷を受けやすいです。

妊婦のお腹の中にいる胎児はすごいスピードで細胞分裂を繰り返して成長しており、生まれた後の赤ちゃんも急激に成長しているため大人よりも細胞分裂が活発です。
つまり胎児や乳幼児は大人よりも放射線感受性が高く、同じ線量の被ばくを受けたとしても大人よりも影響が大きいと言えます。

とはいえ、放射線というものは一気に大量の被ばくをすると細胞が修復不可能な障害を受け、髪の毛が抜けたり、出血が止まらなくなったりといったいわゆる放射線障害がおきますが、飛行機に乗った程度の少量の放射線の場合は、一定期間で細胞への損害は回復しますので、CAなみに毎日赤ちゃん連れで飛行機に乗っている!というようなケースでもない限りそこまで気にしなくても大丈夫です。

参考)航空機による放射線被曝の安全性とリスク [放射線・放射能汚染・医療被曝] All About

以上、3点を気にしておけば航空機による放射線被ばくについては一般の利用者がそこまで気にしなくてもいいかと思います。

参考)太陽フレアについて

まとめ

以上、ウイルス感染症、気圧の変化による耳への影響、低酸素による脳や心臓への影響、放射線の影響など、赤ちゃんを飛行機に乗せることに対するリスクや悪影響について考えてみました。

結論としては、航空会社としては生後1~2週間以上であればOKだけど、できれば1ヶ月健診が終わってからの方がベター。
可能なら4~5ヶ月以上で首が座ってからの方が安心だよ、という感じです。

あとは飛行機に乗らねばならない理由によります。
生後1ヶ月以内でもどうしても飛行機に乗らねばならない理由があるのなら仕方がないし、不要不急の観光旅行等だったらできるだけ赤ちゃんの負担を軽くするためにももうちょっと先延ばししてあげた方がいいでしょう。

乾燥していて酸素が薄く、知らない人がいっぱいいて、狭く窮屈で思うように動けない。
赤ちゃんにしてみれば多大なストレスになることは間違いないので。

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